ヒラノトシユキ、きたざわけんじ、いざわ直子、龍神貴之、早川靖子、町山耕太郎、永井淳、正一、山下以登、宮木ミチル
ヤマモトマサアキ、 ますこひかり、 さとうふみたか、 駒井和彬、 中村葉子、 近江カズヒロ、 斉藤高志、山口珠瑛、足立真人、 ワタナベモトム、 イフクカズヒコ、 タナカリヨウスケ、 クラークソン瑠璃、 越井隆
今回のコンペでは、初めての試みにも関わらず、128人の皆様から、572点の作品をご応募いただきました。
集まった作品データは、DVDに焼いて、各審査員に送付いたしました。
審査は、このデータをもとに、事務所やアトリエで好きな時間に進めていただきました。話し合いは電子メールを使っています。
まずは、応募者の中から、気に入ったイラストレーターの名前を人数制限なしに挙げていただくところからお願いしました。
2人以上の審査員から名前が挙がった応募者を、最終選考に残すこととしました。
ここで選に漏れた中から、各審査員が強く押したい1人のみを最終選考に残せることとしました。
こうして残った応募者を1次選考通過者としました。
次に、1次選考通過者を対象に、最終選考が行われました。方法は、10点満点で、全候補者に点数をつけていただくというものです。
この採点の結果、1位となったのは、高寄尚子さんでした。2位は1点差で、ヒラノトシユキさん。3位のきたざわけんじさんまで点差は僅か。大賞争いは、この3人の接戦でした。
ここで、改めて審査員による話し合いを行いましたが、やはり高寄尚子さんを大賞とすることで意見が一致しました。
さらに、高寄さんを除く、得点上位10名までを入選とすることとなりました。
こうして、大賞および入選が決まりました。
どのイラストレーションにもそれぞれ魅力があり、イラストレーション界の将来を担う可能性がそろった、とうれしく思います。
惜しくも大賞・入選に至らなかった皆様も、今回は運がなかっただけかもしれません。ぜひ、選ばなかった審査員を見返すぐらいに活躍してください。
ご応募いただいた皆さんの未来に、期待しています。
イラストレーターズ通信 主催・理事 森 流一郎
イラストレーター。セレクトショップ勤務時代に販売促進ツールとしてのイラストレーション制作に携わり、2002年に独立。現在は書籍装画、絵本、雑誌、広告など広く活動する。主な仕事として『完訳クラシック版赤毛のアン』シリーズの装画、絵本『赤いくつ』、2009年春夏ユニクロUTのTシャツデザインなど。1999年ペーター賞、2003年TIS公募プロ部門大賞、2007年講談社出版文化賞さしえ賞を受賞。
森さんからお話をいただいて大役を引き受けましたが、絵を選ぶというのは本当に難しいですね。
審査員は何度か経験しましたが、いつも緊張してぐるぐると迷ってしまいます。
個性もさまざま、いろいろなテーマで描かれた絵を見て「これだ!」とすぐに決められず、結局は好きな絵を選ぶしかないのですが…本当に大変。と言いつつ楽しい作業でもありました。
最近の傾向だと思いますが、他のコンペ同様「遠い風景」を描かれる方が多いと感じました。もちろん、爽やかで広々とした風景の絵は大好きですが、作品群の中に魅力的な人物の絵があると、思わず目が止まってしまいます。やはり人物の顔は強く訴えるものがあるようです。
今回入選された方々はたいへん力量があります。共通するのは数点出品されていて、並んだ作品からその方の世界観がきちんと伝わってくることです。
すでにお仕事で活躍されている方もたくさんいて、安定感もありました。
大賞を受賞された高寄尚子さんの丁寧に描かれた作品にはじんわり心惹かれます。
港を描いたシリーズに趣がありますが、1 枚だけあった女性の絵も素敵でした。装丁のお仕事など合っているのではないでしょうか。
もっとたくさん描いていく中で、いろいろなテーマに挑戦していけるといいですね。
まだまだ変わっていきそうで楽しみです。
それにしても、コンペの作品を拝見するたびに上手な方が多くて驚きます。新人の頃の自分の作品など比べものになりません。
わたしも頑張っていかなければ、と焦ってしまいました。
1966年東京生まれ。国際基督教大学生物科卒業後、渡米。Art Center College of Design卒。主な仕事に、漫画『チキュウズィン』(木内達朗・作/新潮社)、絵本『氷河ねずみの毛皮』(宮沢賢治・作/偕成社)、英国ロイヤルメール2006年クリスマス切手、スターバックス2007年クリスマスキャンペーンなど。講談社出版文化賞受賞。
2009年は偶然にもチョイス、TISコンペ、イラ通と選考委員をする機会の多い年でした。
どのコンペでもしばしば見受けられる応募作品が、人物やモノなどをただポンと描いただけのもの。こういう作品ではなかなか上位入賞、入選は難しいと思います。
気まぐれにただ人物やモノだけを描いてもダメなんです。
また、普段思いつきで人物などのモチーフを選んで描いている人は、たとえ背景を描いたとしても、 周囲の余った空間をどうやって埋めようかと後から 考えて適当に処理しているのが見えてしまいます。
僕にも覚えがありますから、気持ちはわかります。高校生の頃、アメリカンフットボールが好きで、 雑誌に載っている写真からカッコいいポーズの選手を描いたはいいけれど、周囲が寂しい気がして、適当にスピード線のような模様らしきものを描いてバックを埋めた記憶があります。まだイラストレーションが何かということも理解していない高校生だったわけですから無理もありません。写真を見て、この選手を描きたいという気持ちだけで、目的のない絵を描いていたということです。
仕事では、描くべきモチーフは外側から来るのであって、自分の描きたいものを先に選んで準備しておくことはほとんどできません。たとえば、アメフトのイラストレーションの仕事だとしたら、クライアントからの依頼を受けて、伝えられた内容の条件を満たした上で、どんな選手がどんな場所でどんなポーズとっているべきか考えて自分なりの表現をすることになります。
コンペやプロモーションの目的はイラストレーションの仕事を得ることです。その意味で効果的な作品を作ろうとするならば、気まぐれに描いた作品を見せるのではなく、依頼された世界観を表現できる実力を知ってもらうことが重要です。ただポンと描かれた人物やモノでは何の説得力も持ちません。
ではどうするか。小説やエッセイを読むなり、広告を考えるなりして、架空の仕事を設定すれば、どういうモチーフをどういう世界の中に描いたらいいのか自ずと見えてくるはずです。自分がアートディレクターになって自分に発注してみるという、ロールプレイをしながら制作することが大切です。そんな世界観のある作品が描けるようになれば、仕事で人物やモノなどを単体で描いてくださいという依頼が来ても楽々と対応できます。その逆はできないですよね。
プロフィール:1964年大阪生まれ。「イラストレーターズ通信」理事。主な仕事に、小説挿絵『なぎさの媚薬』重松清/著(「週刊ポスト」にて連載)、新聞小説挿絵『カシオペアの丘で』重松清/著(信濃毎日新聞ほかで連載)、新聞小説挿絵『摘蕾の果て』大崎善生/著『長崎新聞』ほかで連載)、新聞小説挿絵『これから』杉山隆男/著(『北日本新聞』ほかで連載)など。小説挿し絵、装幀を中心に活動中。
たくさんの応募作品の中で、まず、まっすぐ心に届いてきたのが、高寄尚子さんと、ヒラノトシユキさんの作品でした。
「どちらかが大賞だな……」
と、第一印象ですでに予感がしていました。
2人とも、しっかりとした「世界観」を持ち、見るものの心を揺さぶる力があります。将来が楽しみな才能だと思いました。
「世界観」とはなんでしょう?
人間という存在は、それぞれに違う魂をもち、異なった眼で世を見ています。それが「世界観」という形で作品に反映されます。
例えば、薔薇というテーマを100人のイラストレーターが与えられたとしましょう。きっと、100種類の異なる薔薇の絵が生まれるはずです。
一人ひとり違う魂と世界観を持っているからです。
私が同じテーマに取り組むとしたら、目前の薔薇ではなく、それを見て美しいと感動している自分の魂そのものを描くように心がけます。
人物や風景など、他のモチーフであっても同じです。
いつだって、私の作品は、自身の魂を表現した、心のセルフポートレートに他なりません。すべての作品は、私なのです。
そうしてこそ、「世界観」が表出され、見るものの心を揺さぶることが出来るのではないでしょうか。
イラストレーターに限らず、表現者とは、その感動や感情、そして「世界観」を見るものに伝えて共鳴し合う楽器であり、演奏者なのです。
その能力を、人は「才能」と呼ぶかもしれません。
しかしそれは、特殊な人間が生まれながらに持っているものではなく、普通の人のたゆまぬ努力の結果だと信じています。
「世界観」を深めるためには、たくさん描くことはもちろん、様々なジャンルの一流作品に触れて、浴びるように表現を感じ、人の何倍も感動することが大事でしょう。
その上でー
「世界とは何だろう、自分にはどう見えるだろう?」と、己の魂に問い続けることが必要だと考えています。
この場を借りて、私の創作法の一端を紹介しました。
しかし、これはあくまで私のやり方です。イラストレーションに、唯一の正解なんてありません。人それぞれ違う、その事にこそ価値がある世界です。
自分だけの何かを見つけてください。
お互い、日々精進です。がんばっていきましょう。
「第1回『イラ通』イラストレーション・コンペ」の入賞・入選者による展覧会が、1ヶ月にわたって開催されます。
会期:2010年5月1日(土)から31日(月)(会期中は、土、日、祝日も開廊します)
時間:10時から19時(最終日は17時まで)
会場:マルプギャラリー(東京都豊島区池袋3-18-5 tel 03-5926-6772)
http://malpu.com/gallery/gallery.html
※授賞式・受賞パーティが、5月15日(土)17時からございます。審査員の3人も出席予定です。どなた様も出席できます。ぜひ、お誘い合わせの上お越し下さい。
詳細は、TOPページの「展覧会情報」で
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